反応が乏しい男 | フシギ不動産日記

反応が乏しい男

秋のある日に彼は来店した。

そして、私はいつもと同じように来店カードを渡して彼へ物件の紹介を

始めた。

そんな彼は年齢は20歳で180cmはあるくらい大柄で、しかも今で

言ういわゆるイケメンだった。

私が説明する度に、彼は小さな声で

・・・ハイ。

と答えていた。

彼の条件は「1K~1DK」、「~40,000円」、「駐車場無し」。

しかも構造は「木造」でもよいという珍しい条件。

価格帯で考えると支店のエリアでは予算的に厳しいものではあったが、

42,000円のレ○パレスが空いていたので、さっそく案内するこ

とになった。

バス停までは徒歩5分ほどで、スーパー近くという環境的にはすばらし

い物件だった。

年齢も1つしか違わないということもあり、私自身弟のように接し、

案内していた。

どうしますか?

・・・・

最後に確認を取ったときにも反応が乏しかったので、

じゃぁ、2、3日考えて返事をください。

・・・ハイ。

それから2、3日経ったある日のこと。私が外出しているときに

彼がやってきたらしい。

支店の同期の事務の娘が対応したらしいが、支店に入る前に店の

前を結構ウロウロしていたらしい。

ちなみに店の道路に面したところは全てガラス張りになっているし、

光の関係上、外から中が見えず辛いが、店内からはそういう姿はよ

く見えるわけである。

そして、ようやく来店した彼は物件を決めるという返事をして、明日

また来店すると言って帰ったらしい。

翌日、彼は来店して入居申込書に記入していただくことに・・・。

しかし彼は重要事項説明をしても、今後の流れを話しても、

・・・ハイ。

よくよく彼の職業を見ると・・・




「・・・海上自衛隊」



思わず、彼に

自衛隊だったら、もっとハキハキしなきゃダメでしょう。

と声をかけてしまった。

・・・ハイ。

結局、私は彼との話の中で彼の言葉のほとんどは





・・・ハイ。




だけだったように思える。

入居も済んだ後にたまたま仲が良い夫婦でされている不動産屋へ

寄ったときにその話をしたところ・・・。


「あぁ~ あの子、うちにも来たよ。『あの子物件決めない』って、ここら辺じゃ有名よ。よく決まったね。」

・・・ホント、よく決まったなぁ。しかも、浄水器までつけても

らったし(笑)