斡旋だけではなくプライベートまで担当させるお客様
入社1年目の冬のこと。繁忙期で忙しい日に一組の親子(父親、娘)がやってきた。
近くの女子大に入学が決まったので、住む部屋を探しに来られたのだ。
来店カードに記入いただいたときに「熊本」と書いてあったので、当然のことながら
「私も熊本出身なんですよ。」
なんてことを言って話を盛り上げていた。熊本の人が県外に出るとき、かなり高い確率で福岡県に行っていると繁忙期の経験上分かったので、それをネタにお客様と話すことは多々あった。
さて、物件は3物件紹介。賃貸斡旋するときのパターンというのがあって、3物件紹介するときには中くらいに良い物件を最初に、一番良い物件を次に、最後に捨て物件と回るのだ。
最初にレ○パレスを紹介。学校から少し離れているが、見た目きれいだし、女性が好きそうなつくりなので、当時特に勧めるつもりはなくとも決まっていたので、もしかしたら当時会社で一番決めていたかも(!?・・・ただし繁忙期だけ)
次は学校のすぐそばで女性専用の物件。しかもオートロックで南向きの9帖のフローリング。大人気の物件で予約まであるくらいだ。当然のことながら、紹介中の親子も「うんうん」と納得していた。
そして、最後に捨て物件。しかもこの物件、私が住んでいた物件だったのだ。
この物件を紹介するときに、
「この物件は私も住んでいるんですよ。北向きの部屋なんで洗濯物乾かないんですけどね(苦笑)」
と説明しつつ、空いている部屋(全部同じ間取りなので、実際は違う部屋)で説明をした。
すると・・・。
「この物件にします」
「えっ?」
すると、お父さんも
「あんたもおっとだろう(あなたもいるんでしょう)」
・・・ということで意外な展開。とりあえず物件が決まったところで一安心した。この契約については「こんなこともあったな(vol.2)」にあったように退去予告が入ることを前提に部屋を決めていたのである。それから2ヶ月の間に退去予告が入り、契約書類も取り交わし順調に契約が進もうとしたとき、改めて部屋番号を見てみると・・・。
「あっ俺の部屋の向かいだ!!」
さすがに素行がバレるのは恥ずかしいので、ちょっと嫌だったけれどもとりあえず普段ほかの部屋の人と会うこと自体が稀だからいいやと思いながら契約が完了した。
それから更に一ヵ月後・・・。
会社が休みの日曜日に買出しに行こうと部屋を出て、鍵をして階段へ行こうとしたところ・・・。
「あっどうも!!先日はお世話になりました!!」
契約した親子がちょうど引越しをしていて、お父さんが私に気付いたようだった。
「あら、向かいの部屋だったとですか。娘ばよろしくお願いします。」
「あっ、はい。」
半ば強制的に娘さんの面倒を見なければいけないようになってしまった。
その翌日か翌々日の夜にさっそく部屋のチャイムが鳴らされ、その娘さんとその弟さんを連れて小倉の街を案内することに・・・(未だになぜそういう展開になったかは不明)
特別かわいい娘ではなかったので、特別意識もしなかったけれども何かあるごとに、その友達の部屋探しの相談などを受けていた気がする。挙句の果てには、寝ているところを起こされて、女子大生を紹介されたりしたこともあった。友達の女の子のクレームを受けたこともあった。
でも、会社を辞めるときに何故か友達とプレゼントを買ってきてくれて
「今までありがとうございました。」
と挨拶に来てくれた。何かちゃんと対応してて良かったと思った瞬間だった。
でも、斡旋したお客様が向かいに住んでいるというのはなんとも疲れます(苦笑)